こんにちは!FX SQUARE編集部の葉月です。
最近マーケットで話題になっている「ドイツ銀行の経営破綻問題」、FXをやっていたら最近よくニュースで見るけれど、そもそも何が問題?いつから問題が出てきたの?そんな風に思っている人もいるのではないでしょうか?
「ドイツ銀行」ってどんな金融機関?実際のところ破綻はするの?調べてみてもいまいち分からない・・・そんな思いをされた方もいるはず。
今日は、そんな風にお考えの方のために、なるべくシンプルに、分かりやすくまとめてみました!
ドイツ銀行ってどんな銀行?

ドイツ銀行はフランクフルトに本店を置く、ドイツ最大の民間銀行です。
投資銀行業務も担っているので、日本で言うと三菱東京UFJ銀行に野村證券を加えたようなイメージでしょうか?
国の名前がついていることから、日本銀行のように国の中央銀行と誤解されがちですが、ドイツの中央銀行はドイツ連邦銀行(通称:ブンデスバンク)という別の銀行です。
現在日本ではドイツ銀行グループとして、ドイツ銀行・ドイツ証券・ドイチェアセットマネジメント・DB信託の4法人体制で金融事業を行っています。日本では資産運用部門である「ドイチェアセットマネジメント」がいちばん聞き馴染みがあるかもしれません。
投資信託を買ったことがある方はマークを見れば「ああ」と思われる方も多いはず。
2014年度には銀行業において世界第6位の資産と発表されており、世界有数の大きな銀行です。
そもそもの問題の発端ってどんなこと?
米司法省は2016年9月15日、ドイツ銀行がアメリカで販売していたモーゲージ債に140億ドル(約1兆4000億円)の罰金を科すと発表しました。
ドイツ銀行のトップはメルケル首相に、米国当局への働きかけを依頼したようですが、メルケル首相がこれを拒否した、と地元誌が報じました。
これをきっかけに元々懸念材料だったドイツ銀行の経営難から破綻懸念が再燃し、株価は大きく値を下げることになりました。
結局その問題となった制裁金は、見込まれていた140億ドルを大きく下回る54億ドルで決着する見通しとなっていますが、2016年10月10日現在、まだ合意には至っておらず問題が根本的に解決したわけではありません。
そもそもドイツ銀行の経営難がこれほどまでに注目されるようになったのは、何が原因なんでしょう?
今回問題となったモーゲージ証券とは、リーマンショック前の2005年~2007年に販売した、住宅ローンを担保にした証券のことでした。
モーゲージ証券(MBS=Mortgage Backed Securities)は、わたしたちが住宅を購入する際に利用する住宅ローン(=モーゲージ)を担保として発行された債券です。モーゲージバック証券、住宅用ローン担保証券とも呼ばれます。債券に投資するタイプの投資信託の多くがモーゲージ証券を投資対象としています。
出典:投信資料館
つまり、ここにきてよくニュースで取り上げられるようにはなりましたが、実はドイツ銀行の問題は今に始まったことではなかったんですね。
リーマンショックをきっかけにドイツ銀行も経営状態が悪化し始め、その悪化は段階的に進みました。ですが、ここまでに至ったのにはいくつか原因があります。
①ギリシャのデフォルト問題で不良債権を大量に抱えていること
実は、ギリシャが破綻すると、ドイツ銀行が連鎖倒産する可能性があると、以前から言われていました。
ドイツ銀行は、ギリシャのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という金融商品を大量に販売しているからです。
CDSってどんなものか説明すると、Wikipediaには以下のように書いています。
クレジット・デフォルト・スワップ(英語: Credit default swap, CDS)とは、クレジットデリバティブ(信用リスクの移転を目的とするデリバティブ取引)の一種であり、一定の事由の発生時に生じるべき損失額の補塡を受ける仕組みをとるもの。銀行の自己資本比率を高める対策の一環としても利用される。
出典:Wikipedia
分かりやすく言うと、倒産に備える保険のようなものです。CDSの数字が大きいほど、保険料は高くなります。保険料が高いということは、それだけその対象がリスクを持っているということです。もしその対象先が倒産した場合には、そのCDSを販売した会社が保証します。
つまりギリシャ問題の場合、ギリシャ国債を購入していた人が一定の金額を払ってCDSを購入したとします。購入しておけば、もしギリシャがデフォルトしても、元金分はドイツ銀行から保障されるからです。
その代わり、ギリシャがデフォルトしなければ、CDSの購入者はドイツ銀行に保険料だけを支払うことになります。このCDSは保険のようなものなので、まったく破綻しなさそうな対象先のCDSはあまり売れません。わざわざお金を出して保険を掛ける必要がないからです。
ところが、破綻しそうだと言われだすと、みんなが買うようになり、どんどん高くなっていくのです。つまり、破綻するかしないか微妙なラインにある状態が一番高く売れるタイミングです。
ただ、販売会社としては対象先が破綻してしまったら補填しないといけないので、なんとか破綻は避けようとします。結局、CDSが大量に売れておいしい思いをしたドイツ銀行は、そのCDSによって自らを苦しめることになっているのかもしれません。
CDSは、今回の問題に限らず、その対象の破綻度合いを表す数値としてたびたびニュースで取り上げられます。
②不正ディーゼル騒動を起こしたVW(フォルクスワーゲン)の倒産を防ぐため、1兆円以上の緊急融資を行ったこと
財務状況をきちんと把握し、問題ないと判断したうえでの融資であれば何の問題もありませんが、この融資はメルケル首相に言われるがまま、VWが倒産しないという保証もない状態で融資を行ったものでした。ドイツ政府が保証してくれるわけでもないのに、です。
ドイツ銀行は融資に関しては万事がこの調子で、政府の意向に沿って大金を貸し出しては焦げ付いているような状態です。日本は政府に借金を集中させていますが、ドイツなど欧州の国々は民間銀行が借金を背負っているようなところも多くあります。
つまり、国の財政状況だけ見ていれば健全なように見えても、政府の借金を銀行に押し付けて、健全に見せかけるということも出来るということです。こういった理由から、2016年になって様々な格付け会社がドイツ銀行の格付けの引き下げを行い、2016年6月にはFRBが行った銀行の健全性を評価するストレステストの結果、ドイツ銀行の米国部門は「不合格」となりました。
こうしたことに加え冒頭で話したモーゲージ証券に対する罰金のニュースが発表され、ドイツ銀行の株価は大幅に下がり、逆にCDSは急上昇するという、経営破綻にもなりかねないような状況が見られました。
これらのことは、ドイツ銀行の経営難に加え、EUを支えていたイギリス(名目GDPではドイツに次ぐ第2位)が抜けてしまうことで、その危機的な状況に追い打ちをかける可能性もあることから、リスクを避けようという動きが相まってのことかもしれません。
ドイツ銀行はこれからどうなるの?
さて、肝心の「ドイツ銀行がこれからどうなるの?」ということですが、米司法省から科せられた罰金は大幅減額され、目下の経営破綻のリスクは回避できたというのが、今の相場の見方なようです。
ですが、だからといって、まだ問題が根本的に解決したわけではありません。
もしドイツ銀行が経営破綻するようなことがあれば、リーマンショックの比ではないと言われています。
2008年に起こったリーマン・ショックでは、リーマン・ブラザーズの負債総額は約70兆円と報道されました。それでも十分なほどの影響をマーケットに与えましたが、ドイツ銀行の負債総額はそれを大幅に上回る約260兆円に達すると言われています。

本当に破綻したらどうなるのか想像もつきませんが、影響力が強すぎて、少し現実的ではないような気もします。
破綻しそうなのに、国が何もしないまま見過ごすということも考えにくいです。
色んなニュースが出てくる中で、リスクを避けるために株価が売られたりCDSが上がったりということは影響として出ていますが、世間の見方としては「大きくてつぶせない」というものが多いようです。
ただ具体的に何か策が報じられてこの見方がされているわけではないので、状況を考えると危機に瀕しているのは間違いないと言えます。
まとめ
結局のところ、私たちにはこれからドイツ銀行がどうなるか、それを判断することは出来ません。
ただ、ドイツ銀行に限らず、EU諸国の他の銀行に関しても同じような財政状況だとする声もあり、今後そういったニュースがマーケットに及ぼす影響力は非常に大きいことは間違いありません。
日々のマーケットが変動する要因は、「経営破綻しそうなニュースが出た」「リスク回避の流れになった」という噂や方向性です。
私自身は、こういった為替相場に影響を与える情報が大好きなのですが、私のように好きな方も、逆にあまり興味がないという方も、時々「今、どちらの流れがあるのか」を考えてみるのもいいかもしれません。
もしかしたら、以前と違った相場の流れに気付いて、トレードが前よりもっと楽しくなるかもしれませんよ。