日銀短観とは?

はじめに

毎月勤労統計の不適切な調査が問題になり、国の基幹統計への信頼が揺らぐなど、思わぬ形で脚光を浴びることとなった経済統計。今回は、回答義務がない調査としては驚異的ともいえる回答率(2018年12月:99.6%)をほこり、約1万社というサンプル数の多さから非常に信頼性が高いとされる「日銀短観」をご紹介いたします。

「日銀短観」とは

「日銀短観」は正式名称を「全国企業短期経済観測調査」といいます。統計法に基づいて日本銀行(以下、日銀)が行う統計調査で、全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することを目的としています。

総務省・経済産業省の「経済センサス」をベースに全国の資本金2千万円以上の民間企業(金融機関を除く)から約1万社を抽出し、事前に調査協力の承諾を得られた企業のみを調査対象としています。毎年3月、6月、9月、12月に調査を実施し、翌月初(12月のみ当月中旬)に調査結果が公表されます。

企業が自社の業況や経済環境の現状・先行きについてどう見ているかを問う項目に加え、売上高や収益、設備投資額といった事業計画の実績・予測値など、企業活動全般にわたる項目について調査しています。

「日銀短観」は調査から公表までの期間が短いため、速報性が高く、市場参加者の注目度が高い経済指標となっています。また、国内外で広く利用されており、海外でも”TANKAN”の名称で知られています。

なお、「日銀短観」は調査対象企業からの回答を集計して公表したものであり、日銀の景気判断や予測を示したものではありませんが、日銀が金融政策を決める際の判断材料の一つになっています。

「日銀短観」の歴史

現在、国内外で企業を対象に行う景気動向調査(ビジネス・サーベイ)が数多く実施されていますが、このうち「日銀短観」は最も古い調査の一つです。国内初のビジネス・サーベイは、1951年に当時の日本興業銀行が西独のIFO経済研究所の「景気テスト」を手本に実施した「産業界の短期観測」とされています。日銀ではこれを継承・改定したうえで1957年に約500社を対象に「主要短観」を開始しました。その後、1974年に約5,600社を対象に「全国短観」を開始、2004年に調査対象企業の追加(約1万社)などを含む大幅な見直しを経て、現在に至っています。その後も経済実態等を反映させる形で、調査対象企業や調査項目の見直し等を行っています。

「日銀短観」の見方

「日銀短観」には、業況等の現状・先行きに関する判断(判断項目)や、事業計画に関する実績・予測(計数項目)など、企業活動全般に関する調査項目があります。他の経済統計が数値の集計結果であるのに対して、数値に現れない企業経営者の心理も調査しているのが特徴です。

数多くの調査項目の中で最も注目度が高いのが業況判断D.I.です。業況判断D.I.は、調査対象企業に最近(回答時点)と先行き(今後3ヵ月の見通し)の「収益を中心とした業況全般」について、「良い」「さほど良くない」「悪い」の三つの選択肢から回答を選んでもらう方式となっています。回答結果は、選択肢ごとの回答社数を単純集計し、

D.I.(ディフュージョン・インデックス)として算出・公表されます。D.I.は変化の方向性を示す指標のことで、「良い」「悪い」といったアンケート結果をまとめる方法のひとつです。例えば、回答者の割合がそれぞれ、「良い」30%、「さほど良くない」50%、「悪い」20%であった場合、DIは30-20=10と計算されます。業況判断D.I.がプラスであれば景気は良い、マイナスであれば景気は悪いと判断します。

企業活動は経営者の経営判断に基づいて行われるため、経営者が業況をどう判断しているかはその後の企業活動だけでなく、株式や為替、債券など金融市場にも大きな影響を与えます。また、業況判断D.I.は過去の景気循環(景気の山谷)にほぼ沿った動きをしており、 景気の実態・先行きを占ううえで重要な指標として広く活用されています。

「日銀短観」は同一の調査項目について長期にわたるデータが蓄積されています。このため、その時々の景気実態や企業活動について、「判断項目」と「計数項目」を組み合わせ、過去の類似局面と比較するなど、目的に応じた分析をすることが可能です。

最後に

足元では拡大が続く国内景気ですが、米中貿易摩擦の激化など保護主義的な通商政策の強まりが、企業心理に暗い影を落としつつあります。英国のEU(欧州連合)離脱をめぐる混乱なども加わり先行きの不安材料に事欠かず、投資に二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。めまぐるしく変化する経営環境や企業心理、速報性の高い「日銀短観」を活用し、投資判断に役立ててはいかがですか。