日銀短観とは、「全国企業短期経済観測調査」の略で、日銀自らが全国の企業の経営者に景況感をアンケートして統計調査した、経済的な観測のことです。
調査対象のが1万社以上と多いこと、回答率が、99%以上と高いこと、集計結果の発表が早いことなどから、多くのトレーダーたちにも日本経済の動向を測るために参照されます。
アンケート調査の対象・内容
アンケート調査は年に4回行われ、その集計結果や分析結果が「日銀短観」として4月、7月、10月、12月に発表されます。調査の対象となるのは、全国にある資本金2,000万以上の民間企業21万社から抽出された約1万社の企業です。
アンケートの内容としては、業績や生産や売上、設備投資額、雇用の状況などから、各企業が自社の経済環境の現状・先行きをどう見ているかといったことが問われます。企業は各問いに対し「良い」「さほど良くない」「悪い」の3つの選択肢の中から自社に該当するものを選んでいくことになります。
業況判断指数(D.I.)とは?
日銀短観を語る上で欠かせないのが業況判断指数(D.I.)です。D.I.はDiffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略です。
アンケート調査は、業績や生産や売上、設備投資額、雇用の状況の項目ごとに「良い」「さほど良くない」「悪い」を答えることになります。日銀達観には、これらの統計を基に、項目ごとの「良い」「さほど良くない」「悪い」の割合がどれくらいだったかが掲載されます。しかし、これらのデータ1つ1つを見て長期的な日本経済の動きを見るのはとても煩わしいことです。
そこで用意されたのがD.I.です。D.I.は、各会社が、日銀からのさまざまな質問に答えた上で、最終的に自分の会社は「良い」のか「さほど良くない」のか「悪い」のかを回答し、その統計を計算した値になります。
D.I.は以下のように求められます。
D.I. = 景況が「良い」とする企業の割合 − 景況が「悪い」とする企業の割合
この結果がプラスになれば、経営が好転した企業が多いということになり、マイナスになれば、経営が悪化した企業が多いということになります。
D.I.算出の例
回答 | 回答社数 | 比率 |
---|---|---|
良い | 400社 | 20% |
さほど良くない | 1100社 | 55% |
悪い | 500社 | 25% |
合計 | 2000社 | 100% |
D.I.= 20% -25% = -5%ポイント
円相場への影響
日銀短観の結果が、前回の結果や予想よりも高かった場合、景気が良くなったと判断されます。
日本の景気がいいと、消費が盛んになります。すると今度は物価が上昇(インフレ)します。
例えば、以前100円で買えていたリンゴがインフレによって120円になったとすると、円の価値は相対的に下がることになります。
円の価値が下がることを阻止するため、日銀は金利をあげます。
物価が元に戻れば円の価値も元に戻るため、日銀は政策金利をあげるのです。
金利の高まった通貨は人気が出るので、以前より買われるようになります。その結果円高となるわけです。
つまり、日銀短観の結果(D.I.)がプラスであれば円高方向へ、マイナスなら円安方向へ進むということになります。
世界共通語「TANKAN」
日銀短観は、日本の経済状態を測る手がかりとして国内外の市場関係者から注目を集めています。海外でも「TANKAN」と言えば意味が通じるほど、認知度の高い指標です。
多くの人が注目しているということは、その結果が人々の心理に作用し、株価や為替レートに影響を及ぼすことがある、ということです。
日本の経済指標では、内閣府の月例経済報告と並んで市場に大きな影響を与えるので、ドル円やクロス円を主に取引している方(ほとんどの方が該当すると思いますが)は、この指標の発表に気を配っておきましょう。